6月に入ると、日中は汗ばむ日も出てきますね。今から熱中症対策を行い、罹らない様にしましょう。
暑くなってくると食中毒に気を付けなければいけない季節ですね。
今年の冬から春先にかけて、全国的にノロウイルスが原因の食中毒が多く発生したのを、覚えている方もいらっしゃいます。
基本的に食中毒は1年中、気をつけなければいけないです。
今回は、夏から秋にかけて気を付けていただきたい細菌性食中毒についてお話したいと思います。

食中毒の原因は主に4つ
食中毒は、有害な微生物(ウイルスや細菌)に起因する健康被害です。食品や飲料を介して有害物質が体内に入ると、腹痛、嘔吐、下痢、発熱などの症状が現れます。
食中毒の原因は、大きく分けると、次の4つです。
- 細菌性(カンピロバクター サルモネラ菌 黄色ブドウ球菌 腸管出血性大腸菌(O-157) ボツリヌス菌など)
- ウイルス性(ノロウイルス)
- 寄生虫(アニサキス(サバ、アジ、サケ、サンマ、イカ等に寄生) クアド・セプテンプンクタータ(ヒラメに寄生))
- 自然毒(毒キノコ フグ毒 貝毒 有害植物(スイセンとニラを誤って食べて起こる食中毒など))
- その他(ヒスタミン食中毒(魚類及びその加工品を食べることにより発症する、アレルギー様の食中毒))
中でも、暑くなる季節に気をつけたいのは細菌性です。細菌性食中毒は1年を通じて発生しますが、特に食中毒を引き起こす細菌は30~40℃で最も増えやすくなります。細菌性食中毒はさらに細かく分類され感染型(カンピロバクター、サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌など)、毒素型(黄色ブドウ球菌、セレウス菌、ウェルシュ菌など)があります。

食中毒を引き起こす代表的な細菌性には、以下のようなものがあります。
細菌性食中毒の種類と原因・対策
・カンピロバクター
生息場所:家畜(牛、豚、鶏)やペット(犬、猫)の腸管、家畜の中でも鶏は非常に高い確率で住みついている
注意したい食材:食肉全般、特に鶏肉
症状:腹痛 下痢 嘔吐 発熱(風邪に似た症状)
対策:加熱を十分に行い、生焼け状態で食べない
鶏肉などは直接、手に触れない様に手袋等を使用する
鶏肉などに直接触れた手で、食器や調理器具を触れない
食材を取り扱ったっら、必ず手を洗う(こまめな手洗い)
近年、細菌性食中毒の中で最も発生件数が多いのが、カンピロバクターによる食中毒です。カンピロバクターは、鶏や牛などの家畜動物やペットなどの腸管内に生息している細菌です。食肉全般に付着していますが、中でも鶏肉に多くみられます。流通・市販されている鶏肉の4~6割はカンピロバクターが付着していると言われています。
カンピロバクターによる食中毒の潜伏期間は2~3日と比較的長く、症状は、下痢や嘔吐など、一般的な食中毒の症状です。また、カンピロバクター感染から数週間後に、「ギラン・バレー症候群」という末梢神経疾患を発症することがあります。手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などが生じる疾患で、食中毒の症状が軽かった場合でも発症する可能性があります。
カンピロバクターは乾燥に弱く、75℃で1分以上加熱処理すれば死滅するため、食材の中心部までしっかり火を通してから食べることが大切です。刺身やたたきなど、火が十分に通っていない状態の肉は避けましょう。また夏から秋にかけて、屋外行事が増えてくる時期(BBQ、屋台等)でもあります。お年寄りや小さいお子さんがいる家族は特に注意が必要となりますので、食べる際は、しっかりと火が通っているか確認してから食べさせましょう。
最近は、飲食店や家庭にて低温加熱調理で鶏肉チャーシューを作り、加熱不十分が原因でカンピロバクター食中毒が発生しています。細菌は目では見ることができないので、十分な加熱を行うか中心温度を計り食中毒を未然に防ぎましょう。

サルモネラ菌
生息場所:鶏、豚、牛などの腸管内や河川、下水道等の自然界に広く生息する細菌
注意したい食材:卵とその加工品、鶏肉、食肉、内臓肉、うなぎ、すっぽん等の養殖淡水魚介
食品取扱者(手)から調理器具を介して感染
症状:腹痛、発熱、下痢、嘔吐
対策:十分な加熱(中心温度75℃以上で1分間の加熱を行う)
食材を取り扱ったっら、必ず手を洗う(こまめな手洗い)
食材処理用の調理器具や容器は他の食材と分ける
食材は新鮮な食材を選び、保管は温度管理を行う
食材処理後の調理器具、容器の洗浄、消毒を行う
サルモネラ食中毒の流行時期は、夏です。たとえ菌の量が少なくても付着していれば食中毒を引き起こすリスクが高いので、生肉や卵などは新鮮なものを素早く調理して、菌が食品に付く隙を作らないようにしましょう。
サルモネラ感染症は、サルモネラ属の細菌によって引き起こされる感染症で、主にサルモネラ・エンテリティディスという細菌が原因となっています。
国内の食中毒事例では、件数は少なくても、一度発生すると多くの患者数を出してしまうという食中毒です。サルモネラ感染症は、原因食品として「鶏卵」がよく知られていますが、鶏卵以外にも食肉での感染や、人やペットからの接触感染によって発症することもあります。
サルモネラ食中毒が発症した場合、まずは嘔吐が始まります。吐いたものを誤嚥して窒息しないよう、横向きに寝ると安心です。脱水症状に気をつけないといけませんが、嘔吐を繰り返している間は水分を補給してもまた吐いてしまい、かえって脱水症状を加速させることになりかねません。特に子どもや高齢者は脱水症状のリスクが高いため、無理に水分を摂取しないように注意が必要です。嘔吐を繰り返し、水分が取れない場合は速やかに医療機関を受診しましょう。
潜伏期間は、5~72時間(平均12時間)です。感染して12時間から72時間の症状のない期間があった後に下痢、腹痛、発熱などが見られます。まれにサルモネラ菌が血液中に入り、他の臓器に病気を起こし、重症化することもあります。特に高齢者、こどもや免疫に障害がある人は注意が必要です。
サルモネラ菌は、熱に弱いですが、低温、乾燥には強い菌です。平成の時代にはイカ菓子や海苔からもサルモネラ食中毒が発生しています。

黄色ブドウ球菌
生息場所:健常な人の手指、鼻腔、咽頭、腸管または傷口(特に化膿している所)等に生息しており、保菌率は約40%
注意したい食材:お弁当、おにぎりやサンドイッチなど作り置きの食品(人の手で扱う食品全般)
症状:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢
対策:素手で食材、食品を取り扱わない(手袋を使用する)
手洗いと手指消毒を定期的に行う(こまめな手洗い)
手指に傷が症状ある場合は、基本は調理に携わらない
食品を10℃以下で保存し、常温放置をしない
調理後はすぐ食べる
黄色ブドウ球菌は自然界に広く分布していますが、人の体でも手指や鼻前庭、髪の毛、咽頭などの多くに常在している細菌です。特に傷口や化膿している部分に多くの菌が存在しています。なお、名前の由来は顕微鏡で見ると丸い菌がブドウの房のように集まっていることからこの名前が付けられました。
黄色ブドウ球菌による食中毒は、食品が黄色ブドウ球菌に汚染されていると菌が増殖する過程において「エンテロトキシン」と呼ばれる毒素を作り、その毒素を食品と一緒に食べることにより引き起こされます。黄色ブドウ球菌自体は熱に弱いため(60℃程度で30分加熱)十分に加熱すれば死滅しますが、産生されたエンテロトキシンは熱に強く100℃で30分間の加熱でも無毒化されません。また、黄色ブドウ球菌は多少の塩分があっても増殖して毒素を作り出す特徴も持っています。
黄色ブドウ球菌は潜伏期間が30分〜6時間程度であり、平均約3時間で症状がみられる傾向があります。食中毒の症状としては、ほとんどの場合で悪心(吐き気)やおう吐がみられます。ほかにも、下痢の症状もみられます。
黄色ブドウ球菌による食中毒を予防するためには、細菌を付けさせないことも重要ですが、増殖させないことも大切です。細菌は約20℃の温度で増殖をしやすく、黄色ブドウ球菌においては30℃〜37℃程度の温度帯で活発に増殖するといわれています。
調理を行った後は、調理されたものを素手で触らない。顔や髪を触った手で、食材を触らないようにするなどの菌をつけない様にしましょう。
料理で使用する食材や料理したものを常温で放置すると、黄色ブドウ球菌が活発に増殖してしまい、毒素である「エンテロトキシン」が産生されやすくなります。黄色ブドウ球菌による食中毒を予防するためにも、食材や料理は常温で放置するのは避けましょう。
なお、黄色ブドウ球菌のような細菌は、10℃以下で増殖がゆるやかになり、-15℃以下になると増殖が停止します。そのため、食材や料理は短時間であっても冷蔵庫に10℃以下で保存するようにしてください。
気温が高くなる夏から秋にかけては、お弁当や総菜は食べるまで、冷蔵庫に冷やしておくなどの対応を行い、菌を増やさないように努めましょう。

腸管出血性大腸菌(O-26 O-111 O-157など)
生息場所:牛などの家畜の腸管
注意したい食材:牛肉、牛レバー、ハンバーグ、サラダ
症状:腹痛、下痢、頻回の水様便、血便
対策:素手で食材、食品を取り扱わない(手袋を使用する)
手洗いと手指消毒を定期的に行う(こまめな手洗い)
加熱を十分に行い、生焼け状態で食べない
調理器具(菜箸、トング、フライ返し等)は使い回さない(加熱前用と加熱後用と分ける)
主に腸管出血性大腸菌(O-157)に感染する経路は主に2パターンあり、「菌に汚染された食材・食品を口にしてしまった場合」と、「すでに腸管出血性大腸菌(O-157など)に感染している人からの2次感染(ヒト-ヒト感染)」です。食品から感染する場合は、牛肉及びその加工品、サラダ、白菜漬け、井戸水等から感染したケースが過去に見受けられます。特に生肉(レバーやユッケ)からの感染例は多いです。過去には生肉のユッケが原因で発生した集団食中毒が発生しています。過去の食中毒を教訓に現在は、ユッケなどの生食用牛肉を提供するには、厚生労働省によって定められた厳格な基準を満たす必要があります。また、生肉だけでなく、牛たたき、ローストビーフなど生に近い状態で口にする食品も原因となっています。すでに感染している人からの2次感染の場合、その感染者が調理をすることで食べ物自体に菌が付着してしまうほか、タオルを共有したり、お風呂などを介して感染する可能性も十分にありあり得ます。少数の細菌数で感染が成立しやすいため、家族、職場の1人が感染してしまうと全体に広がる可能性が高くなります。
食中毒や感染症で腸管出血性大腸菌に感染すると、3~5日のうちに、出血性大腸炎(水様下痢、血便、激しい腹痛)が起こります。大腸で増殖するときに、「ベロ毒性」という猛毒を作りだします。ベロ毒素によって大腸の粘膜が傷められ血便が出はじめます。特に乳幼児・子ども・高齢者では、「溶血性尿毒症症候群(HUS)」を引き起こし、腎臓や脳に重大な障害を生じさせたり、時には死に至ることもあります。おう吐や高熱の発症率は低いです。中には全く症状が出ない方もいます。また腸管出血性大腸菌は便と共に排泄されますので、トイレ後の手洗いが不十分だと、感染者を介して料理を汚染してしまう可能性があります。腸管出血性大腸菌は感染しても無症状の場合がありますので、症状がなくてもトイレ後の手洗いは重要です。食中毒が疑われる症状が出た場合には、速やかに医療機関を受診しましょう。
腸管出血性大腸菌は加熱で死滅させることができます。食材の中心部が75℃で1分以上の加熱で死滅します。
牛肉などはテンダライズ処理(肉を柔らかくするために筋を切断する処理)やタンブリング処理(調味料に湿潤させる処理)された肉や、成形肉(細かくした肉を結着剤で固めた肉)、ひき肉などは肉の内部まで腸管出血性大腸菌が入りこんでいる可能性がありますので、中心部までしっかり加熱しましょう。
食中毒の予防策としては、生の牛肉を扱ったあとは必ず手を洗うこと、生の牛肉の作業に使用した包丁、まな板等の調理器具は、そのまま次の用途に使わず、きちんと洗浄・殺菌をしましょう。
生野菜由来の食中毒事例もありますので、野菜は流水でしっかり洗いましょう。特に学校給食センター、大規模調理施設、高齢者福祉施設においては、野菜や果物を加熱せずに提供する場合には殺菌・消毒を徹底するよう厚生労働省から方針(大量調理施設衛生管理マニュアル)が示されています。
焼肉やバーベキューを楽しむときには、次の点に注意しましょう。
①生肉を使った肉料理を避けること。
②肉の中心部まで十分に加熱すること。
③素手でお肉を触らない。手袋を使用して、お肉を触った手袋でほかの食材を触らないようにしましょう。その都度、
手袋を交換して、菌を広げないようにしましょう。
④生肉に使用する調理器具(包丁、なま板、菜箸、トング等)は専用のものを使い、使い回さない様にしましょう。
⑤こまめな手洗いを行いましょう。
子どもや高齢者など抵抗力の弱い方は、腸管出血性大腸菌食中毒の重症化リスクがあります。食事を楽しむためにも、周りの方も含めて注意しましょう。

ウェルシュ菌
主な生息場所:動物の腸管、その他にも土壌中など、自然界に広く存在
特に注意したい食材:煮込み料理(カレー、シチュー等)、煮付け
症状:喫食後6~18時間後(平均10時間)に腹痛、下痢
対策:加熱調理した食品は短時間で冷却、低温保存する
カレー、シチューなどの加熱時にはよくかき混ぜながら、中心部まで加熱する
調理した食品はすぐに食べる(調理後から食べるまでの時間を短くする)
前日調理を避け、調理後は室温で放置しない
やむをえず保管する場合は、容器に小分けするなどして中心まで急速に冷やす
ウエルシュ菌そのものは熱に弱いですが、形成する芽胞は100℃で数時間加熱しても死滅しません。この芽胞は、加熱後、まわりの温度が下がって50℃位になると発芽し始めます。芽胞を作る時に毒素「エンテロトキシン」を産生するウエルシュ菌があり、その毒素が下痢や腹痛の原因となります。
芽胞に守られた休眠状態の菌は、体内に入っても休眠状態のまま排出されるため、調理後すぐに食べてしまえば害はありません。しかし、ウェルシュ菌は「菌が加熱不十分の状態」+「酸素がない状態(嫌気性)」+「50℃以下の条件」が重なると増殖しやすくなるため、調理後に室温で放置しておくと、時間の経過とともに料理が冷めて、菌が増えやすい温度になってしまいます。すると、芽胞に守られていた菌は瞬く間に増殖し、食中毒の原因となるのです。
また煮込み料理(カレーなど)を大量に作った際、じゃが芋や人参などの土壌で育った野菜や肉に菌の芽胞が含まれていると、加熱時に菌は死滅しても残った芽胞がウェルシュ菌に変化して毒素を産生し、集団食中毒の原因になることがあります。
ウェルシュ菌は、加熱した食品が冷める過程で急速に増殖するため、食べきれる量だけを作るようにしましょう。
作り置きする場合は、加熱後に小分けしてできるだけ早く10℃以下の環境で冷却・保存しましょう。野菜類は流水でしっかり洗ってから使いましょう。

セレウス菌
主な生息場所:土壌など自然界に広く生息
注意したい食材:米飯及び焼き飯等米飯の加工品、スパゲティ、肉類、スープ類、焼きそば、プリンなど
症状:下痢型 8~16時間で下痢、腹痛(ウェルシュ菌に似る)
嘔吐型 30分~6時間で吐き気、嘔吐(黄色ブドウ球菌に似る)
対策:食品を室温で放置しない
調理した食事はすぐに食べる
セレウス菌は、自然界に広く分布している細菌です。空気中や土の中、河川といった自然環境だけでなく、農産物や水産物、畜産物の食料・飼料などどんなところにも存在しています。
セレウス菌は10℃〜50℃程度の温度で増殖し、25℃〜35℃ほどの温度域では活発に増殖をします。そして、耐熱性の芽胞を形成する細菌であるため、90℃で60分加熱しても生存する特徴があります。
セレウス菌による食中毒は、嘔吐型は、食品中またはヒトの小腸で生成された嘔吐毒素「セレウリド」によって引き起こされます。下痢型は、食品とともに摂取したセレウス菌が人体の腸管内で下痢毒素「エンテロトキシン」を産生することにより発症するものです。
日本国内では嘔吐型の食中毒が多く見られ、セレウス菌の嘔吐毒に関しては120℃以上で90分加熱処理をしても失活しません。
セレウス菌はチャーハンやパスタなどの米・小麦料理で注意が必要です。米や小麦等の穀類は土壌に接する機会が多いため、セレウス菌に汚染されている可能性が高い食材です。食品や料理を放置をすると、セレウス菌が増殖してしまい、食中毒が発生するリスクがあるため注意が必要です。調理済みの食品を常温で長時間保存しない等の対策が大切です。一度に大量調理して提供する飲食店(食べ放題やビュッフェスタイル)は注意しましょう。
セレウス菌による食中毒を起こさない様にするには「必要最少量の調理を行い、速やかに提供・喫食する」、「保管する場合には、8℃以下または55℃以上を保つ」の2点が重要となります。

まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、夏から秋にかけて、気温が高くなる季節に発生しやすい食中毒(細菌)をご紹介いたしました。
今回、ご紹介できなかった、「ウイルス」、「寄生虫」、「自然毒」「その他」も毎年、発生しています。お気を付けください。
ボリュームが多い内容となってしまいましたが、食中毒の名前や特性を覚えることで、食中毒の予防の知識が深まります。食中毒を防ぐには、食中毒を知ることと調理中の食材を注意深く観察することが重要となります。
食中毒を防ぐ三大原則は、「付けない」「増やさない」「やっつける」です。
学校給食施設、保育園、高齢者施設、飲食店、家庭で調理をされている方も、今一度、食中毒の三大原則に沿って、今年の夏から秋にかけて、食中毒を発生させない様にしましょう。
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