皆さんは「2025年問題」はご存じでしょうか。いわゆる「団塊の世代(1947年~1949に産まれた世代)」が全員75歳以上となり2,154万人余りおよそ5人に1人が後期高齢者になり、社会保障費の増大と現在の支援体制をどの様に拡大、維持していくかが大きな問題となっています。
そして、高齢者が直面する主要な問題の1つとして、栄養不足からくる「やせ」や「低栄養」が挙げられます。その原因の主な要因は、身体的要因(味覚・嗅覚等の感覚器の機能低下、咀嚼(そしゃく)・嚥下(えんげ)能力の低下、身体活動量の低下のほか、老人性うつ(高齢者うつ)や認知症などの精神的要因や、孤食や独居などによる社会的要因等が相互に関連し、食欲や摂食量が低下することにより、低栄養状態に陥りやすくなります。
やせ、低栄養、さらにその先に気を付けなければならないのが、フレイルです。フレイルを予防するためには、これらの背景要因を考慮したうえで、日々の食事から必要な栄養素を適切に摂取することが重要になってきます。
フレイルと関連しているのが、ロコモティブシンドロームとサルコペニアです。フレイルはロコモティブシンドロームやサルコペニアの原因になりますし、逆にロコモティブシンドロームやサルコペニアがフレイルの原因にもなります。
今回は、フレイル?、ロコモティブシンドローム?、サルコペニアとは?高齢者の低栄養からフレイルに陥る流れについてまとめてあります。予防法と高齢者と食事の重要性についてお話していきたいと思います。

フレイル
フレイルとは、健常な状態から要介護へと移行する前の状態のことです。具体的には、老化で筋力が衰えることで体の疲れを感じやすくなったり、脳疾患などの病気になりやすくなったり、転倒による事故が起きやすくなるなど、老化で生じる衰え全般を示します。多くの高齢者はフレイルを経て少しずつ要支援・要介護状態に移行するとされています。また、フレイルの一歩手前の状態をプレフレイルといいます。
フレイルという概念には、身体的な問題以外にも、認知機能障害やうつ病などの精神・心理的な問題、1人世帯の高齢者(独居)・経済的な困窮などの社会問題も含め、高齢者の状態を全体的に把握していくものとなっています。
高齢者がフレイルの時期に心身や社会性の大きなストレスを受けてしまうと、体を回復する力が低下してしまいます。そうなると、ストレスへの抵抗力まで弱ってしまう恐れがあります。(例えば、風邪をこじらせて、肺炎を発症してしまうことです。)しかし、この時点で適切な支援を受けられれば、健常な状態に戻れる可能性が高い時期とも言われています。そのため、フレイルは早期発見と支援が重要(栄養・運動・社会参加)です。
フレイルになる原因
フレイルは加齢により心身の変化と同時に、社会的・環境的な要因が重なることで、徐々にフレイル状態になると考えられています。この負のサイクルを放置すれば虚弱状態が進み、やがて要介護状態へと変化してしまいます。フレイルの原因には次の例があります。
- 動く機会が減った
- 他人との交流が減った
- 歩くペースが遅くなるなどの身体機能の低下
- 筋力の低下や筋肉量の減少
- 体重の減少
- 疲れやすく元気が出ない
- 糖尿病や呼吸器疾患など日常的にケアが必要な慢性疾患にかかる
- 栄養不足になっている
- 収入が減少した
- 孤独や閉じこもりになっている
上記の状態に当てはまる部分があれば、フレイル状態になっている可能性があります。2020年から75歳以上の後期高齢者を対象とした健康診査でフレイル状態のチェックが可能となりました。下の表にフレイル検診の質問表を載せました。少しでもフレイルかな?と思ったらかかりつけ医に相談を行うまたは市町村の健診を受けて状態を把握しておくと良いでしょう。

ロコモティブシンドローム
フレイルの中でも運動器が衰えて移動機能が低下している状態のことを「ロコモティブシンドローム」と言います。
運動器とは骨、筋肉、関節、神経などが連携して体を動かす仕組みを指します。つまり、運動するための仕組みに何らかの衰えが生じ、立ったり歩いたりする機能が弱まっている状態です。
ロコモティブシンドロームになると、将来的に介護が必要になる可能性が高まります。実際、要支援や要介護になるきっかけで最も多いのは転倒、骨折、関節の病気といった運動器の支障が多いです。
ロコモティブシンドロームになる原因
ロコモティブシンドロームは自覚症状がない場合が多いことです。そのため、いつの間にかロコモティブシンドロームになっていたり、進行していたと言うケースもよく見受けられます。自覚症状がない理由は、車、バスや電車、タクシーなどの移動手段が多く、日常生活に支障を感じにくいからでしょう。
しかし、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を患っている人は、若いうちからロコモティブシンドロームの原因につながりやすいと判明しています。そのため、ロコモ度チェック(立ち上がりテスト・ステップテスト・ロコモ25)でロコモティブシンドロームかどうか判別し、なっていた時は進行させないように対策を取ることで健康寿命を延ばしていけます。整形外来など病院にロコモティブシンドロームの啓発ポスターが掲示されていますので、受診の待ち時間に一度、ご覧ください。
サルコペニア
加齢や疾患などによって全身の筋肉量が減少し、筋力低下が起こることを「サルコペニア」といいます。「ロコモティブシンドローム」が運動器全体の障害を指すのに対し「サルコペニア」は筋肉に特化していることが特徴です。
筋肉も運動器の一部ですので「サルコペニア」は「フレイル」と「ロコモティブシンドローム」の双方に含まれる状態となります。
本来、筋肉量は筋たんぱくが合成と分解を繰り返すことで維持されます。しかし、筋たんぱくの合成で必要となる因子が減ったり、分解が合成よりも上回ったりしてしまうと筋肉量の減少につながってしまうのです。
歳を重ねると筋肉の増加に関わるホルモンが減り、筋肉を動かすための細胞が死んでしまったり、エネルギー産生に関わるミトコンドリアの機能障害が生じたりします。さらに寝たきりや活動低下による廃用(はいよう)(長期間の安静や運動不足によって身体機能が低下し、心身のさまざまな機能が衰える状態)、栄養不足、遺伝性の病気による筋の萎縮などの原因も合わさり、サルコペニア状態に陥ってしまうのです。また、脳から筋肉に指令を出す運動神経の損失、成長ホルモンや甲状腺機能異常など筋肉に増大に関わるホルモンの影響でサルコペニアになる場合もあります。
サルコペニアになる原因
サルコペニアの原因は大きく二つに分けられます。一つは加齢が原因となる一次性サルコペニア、もう一つは加齢以外の原因でなる二次性サルコペニアです。二次性の場合、さらに細かく原因が分類されます。
それぞれは異なる概念ですが、共通点もあります。いずれも状態が進行すれば要介護や寝たきり状態になってしまいます。それは、健康寿命を著しく下げる原因となります。また、糖尿病や高血圧、メタボリックシンドロームなど生活習慣病による疾患・運動機能の低下がフレイル・ロコモティブシンドローム・サルコペニアを招く原因でもあります。高齢になると加齢で運動低下により、若い頃と比べて活動量が低下します。それにより筋力低下を招き、動かない生活につながります。さらに生活習慣病の影響で運動への意欲がなくなる人も多いです。
しかし、動かない状態が続くと筋力が低下するだけではなく、加えて精神面の低下も招いてしまい、全体が衰える原因につながってしまうのです。また、高齢となると同年代の死別や子育て・仕事などの役割が終わる喪失感を感じやすく、精神面の低下の要因となっています。
自宅や自室に引きこもった生活は自発的に交流する機会をなくし、社会性の低下を招きます。活動量が減り、心身機能が下がれば食欲の減退や栄養不足、準寝たきり状態となってますます全身の機能は衰え、フレイル状態に突入します。フレイル状態になれば認知症の発症や身体機能の低下による嚥下障害や誤嚥性肺炎の発症、栄養状態の悪化で免疫力が下がり感染症を患いやすくなるなど、生命の危機に瀕する可能性も高まります。
フレイル・ロコモティブシンドローム・サルコペニアは老化の影響が大きいものの、生活習慣病や食生活、社会との関わりによって起きるという共通点を持ちます。普段の生活を見直し、適切なケアと予防に取り組むことが要支援・要介護の予防となります。何をしたらよいか分からない時は、まずは地域の包括支援センターに相談して頂けると、話がスムーズに進みます。
フレイルとの関係性
要介護の前段階を示すフレイルの要因には身体的な側面が含まれ、その点はロコモティブシンドロームと深い関わりがあります。ロコモティブシンドロームはフレイルよりも早い時期から現れ、それが進行して機能低下を自覚できるようになった状態が身体的フレイルです。ロコモ度(1度~3度)で言えば、移動機能の低下で社会参加にも支障が出る「ロコモ度3」(移動機能の低下が進行し、社会参加に支障をきたしている状態です。)の状態が身体的フレイルに相当します。
サルコペニアは、加齢による筋肉の低下や骨格筋の萎縮など身体機能が低下している状態です。一方、フレイルは身体機能の低下に限らず、精神面や社会面の低下もすべて含む概念である点が、サルコペニアとの違いです。
ロコモティブシンドロームは運動器の障害による移動機能の低下を示すので、フレイルとは違う概念です。どちらかというと身体機能の低下を意味するという点はサルコペニアに近いです。
ただ、サルコペニアの原因は筋肉への障害にあります。しかし、ロコモティブシンドロームは筋肉を含むすべての運動器の障害を指している点に違いがあり、サルコペニアもロコモティブシンドロームの原因の1つです。そのため、フレイルに影響を与える病態でもあるのです。
予防法
フレイル・ロコモティブシンドローム・サルコペニアは、痩せ型の体型のほうが危険だと言われています。しかし、肥満体型の方も運動量や筋力の低下でフレイル・ロコモティブシンドローム・サルコペニアの3つを招いてしまいます。そのため、体型に関わらず普段から運動と食事で予防を心がけることが大切です。
運動
フレイル・ロコモティブシンドローム・サルコペニアは加齢による活動量の低下で起こるので、普段から運動を心がけることが予防では重要です。予防に良いとされているのは、筋トレ(レジスタンス運動)と有酸素運動を組み合わせることです。
筋トレ
筋トレは筋に負荷をかける運動です。筋肉に繰り返し負荷をかけることで、筋力を鍛えて筋肉量の減少を抑える効果があります。ストレッチやスクワットなど簡単なトレーニングで良いので、毎日続けていきましょう。また、体を動かすと脳が刺激されるので、脳の活性化にもつながります。
筋力に自身がない方は機械を使って無理なくトレーニングをする方法もおすすめです。また、イスに座った状態で両足を上げ下げし、一定の位置で止めるといった動作を繰り返すだけでも腹部や下半身の筋肉を鍛えられます。いずれの筋トレも、筋肉に負荷をかけて動かすという意識を持っておこなうことが大事です。
有酸素運動
筋トレと一緒にやった方が良い有酸素運動とは、呼吸を必要とする運動です。ジョギングやウォーキング、スイミングなどが当てはまります。有酸素運動を取り入れることで、全身の血行が良くなります。また、脂肪燃焼を促すのでメタボの予防や改善にもつながります。生活習慣病の予防や改善にも役立つので、結果的にフレイル・ロコモティブシンドローム・サルコペニアの予防につながります。
気軽に取り組める有酸素運動はウォーキングでしょう。ウォーキングは心臓や肺の機能を高めたり、骨を丈夫にしたりする効果にも期待できます。外の空気を吸い、日差しを浴びるのでリフレッシュにもなり、ストレスの解消にもなるでしょう。
姿勢は背筋を伸ばし、腕を振りながらかかとから足をついて、つま先で地面を蹴るように歩くと歩幅を広げられ、運動効率を高めましょう。
筋トレも有酸素運動も無理のない範囲で続けられるものを選ぶことが大事です。
食事
栄養不足もフレイル・ロコモティブシンドローム・サルコペニアの原因となるので、毎日の食事も予防では重要です。中年期まではメタボを意識した食事が望ましいものの、65歳以降は筋肉の元となるたんぱく質を意識した食事に切り替えることをおすすめします。たんぱく質は肉や魚、大豆、乳製品などの多く含まれているので、積極的に食べていきましょう。
ただし、たんぱく質だけをとれば良いというわけではありません。栄養の偏りは健康状態に影響を与えるので、たんぱく質を含む食品を意識しながら肉・魚・野菜などをバランスよく食べることが大事です。
低栄養とは、食事量の減少や食事内容の偏りなどの理由から栄養状態が悪くなり、体を動かすために必要なエネルギーの摂取量やたんぱく質やビタミン、ミネラルといった栄養素が慢性的に不足している状態をいいます。低栄養の状態が続くことで、健康状態を維持することが難しくなります。
高齢者と食事の重要性
日本は長寿命化が進み、100歳以上になる高齢者も珍しくなくなりました。人生100年と言われる時代だからこそ、健康寿命を伸ばすためにはフレイル・ロコモティブシンドローム・サルコペニアの予防が重要です。
フレイルは要介護状態の手前です。病気や事故(転倒など)で突如、介護が必要になるリスクもあります。3つの病態には食事と運動が予防に有効とされているので、日頃から栄養バランスを心がけた食生活や筋力を維持する運動を心がけて介護予防に取り組んでいくことをお勧めします。
菓子パンやカップ麺など単にお腹の空腹感を満たす食事ではなく、数年後の健康的で活力のある自分に向けて、今から栄養バランスと質の良い食事を摂ることは、今後のますます上がると予想される医療費の削減につながります。なにより、健康であれば、体も心も満たされた幸せな生活を送れる満足感・充実感は何事にも代えがたいのではないでしょうか。
栄養バランスが取れる食事が作れない、たんぱく質多めの食事と言っても何をどれだけ食べればよいか分からない。量もそんなに食べることができない。どんな食材を買えばいいか分からない。そんな時は、「ながさき管理栄養士事務所」にお任せ下さい。管理栄養士として、病院で9年間、給食委託会社で9年間で高齢者の食事の献立と調理を行い食事を提供してきました。ご飯やお粥、食種(ふつう食、一口食、きざみ食、ミキサー食、ムース食)、個々の状態(嚥下状態、とろみ加減など)に合わせて、食事作り致します。
